クラリモンド 死霊の恋
さてさて、明日に迫った『クラリモンド 死霊の恋』についてお話しさせてください。
今回どこからもインタビューがないから、話したいことだらけ!何か質問ありましたらなんなりと。
前回の『死霊の恋』が大好評で、それを長いバージョンに拡大したのが今回。
当時、この作品を通して自身が大きく成長したのを感じました。バレエの型をベースにしつつも、流動的な動きの振り付けからはたくさんのことを学びました。クラシック作品の踊り方は、キャラクターを表現するためですが、この作品ではいかに感情と音楽を表現するかを大切にしています。とても思い入れの深い作品で、熊川監督の指導のもと大きく成長できました。
今回は全編ということで、お客様に作品の世界観を伝えるため、キャラクターへの更なる洞察や心境の表現を大切にしました。僕の演じるロミュオーは、まだ子供らしさの残る青年です。修道院の重圧から逃げ出し、クラリモンドに出会います。恋を知っても、自分の進むべき道のために、泣く泣く別れを告げます。神父に成長してからもその後悔に苛まれています。今回の役作りとしては「若者特有の戸惑い」をベースに、場面ごとに好奇心やプレッシャーといったものをレイヤードしていきました。死霊となったクラリモンドとの再会後は、戸惑い→後悔へと感情のベースを移し、苦しみや悲しさをその上に重ねています。普段の僕と似た性格なので、気持ちが理解しやすく、自然と演じられています(笑)自分の経験してきた出来事が思い出され、「なるほど、人生の経験が舞台で役に立つとはこういうことか」と思ってます(笑)
ロマンチックな旋律が紡ぐ、悲しいほど美しい作品に仕上がりました。この傑作が生まれる瞬間に立ち会えたこと、踊らせてもらえることは、僕のバレエ人生においてかけがえのない宝物になりました。今日のゲネプロを踊ってみて、本当にこの作品を踊れる有難さを噛み締めています。
早くお客様に届けたいです。
p.s.
娼館の場面での群舞の曲って何でしょうか。
ーポーランド民謡による大幻想曲 だそうです!
最後の場面、胸に十字を作って幕が閉じましたがあれはどのような意味合いを持って追加されたのでしょうか。堀内さんはどのように解釈していましたか。
ー個人的な解釈ですが、クラリモンドや自分の罪を許すように祈っているのではないでしょうか。作品全体を通して、ロミュオーは神様からのプレッシャーを抱えているので、幸せを願う<許しを乞う、の方がしっくりきています。
日髙さんと成田さんでリフトの下ろし方を変えていたとありましたが、どのように変えていたのでしょうか。これからパドドゥを見る時に男性側として男性のここを見てほしいとか、どのようにパドドゥを見てもらいたいとかというのはありますか。
ーリフトを下ろす時に、身長や四肢の長さが違うので、しっかりと足が床に着くまで下ろしていました。日高さんと同じ感覚でおろしたら、「足ついてない」とのことだったので。
男性として注目してもらいたいところは、いかに女性が輝いて踊っているか、というところですかね。女性ダンサーは、大変なことをしているので、それがどれだけ楽々と踊っているように見えるかは、男性の役目だと思っています。
パドドゥは、二人の間に生まれる物語を感じていただけたらと嬉しいです。演技や踊りは一人でも成立するけれど、パドドゥは会話なので、二人いてこそです。ペアごとに紡ぐ物語は全く違うので、その違いも楽しんでもらえたら嬉しいです!
人間のクラリモンドと死霊となったクラリモンドとのパドドゥの組み方の違いとかありますか?
ー振付の違いもありますが、人間の時は実在する人とのパドドゥです。死霊になってからは、視線が合わないことや触れられない場面が出てきます。
ロミュオーを演じる上で今回は役作りされましたか?
ー最初に予定されていたストーリーから、制作が進むにつれて日々変化していきました。役柄も合わせて日々姿を変えていきました。なので、今回は役作りといより、制作過程で自然と生まれたロミュオーになっています。以前からある場面も、新しいロミュオー像に合わせて変更されています。
ロミュオーを演じる上で特に重要とした演技ポイントありますか?
ー今回の作品は1時間の中にギュッと内容が詰まった濃いものになっています。なので感情の変化のスピードが早く、お客様にしっかりと物語を伝えることを大切にしています。
前回のクラリモンドは紫織さんでした。今回、役柄が変わり、対峙する上で戸惑いや心境の変化などはありましたか?
ー同じパートナーでも違う役、同じ作品でも違うパートナーと踊ることはあるので、戸惑いなどはありませんでした。メイクをして衣装を身に纏ったしおりさんをゲネプロの舞台上で見たときは、感慨深かったです。
ロミュオーは見ている方も辛くなる位葛藤しながらもクラリモンドへの愛を貫こうと必死ですがそのような感情を毎日のように表現していると実生活にも影響が出ますか?
ーその場面ごとに合った感情を呼び出しながら演じています。舞台袖にはけた瞬間には、その感情は元の引き出しに仕舞い、次の場面に気持ちを切り替えています。なので作品が終わればケロリとして、引きずるようなことはないです。
ただ舞台上では、驚くリアクション一つするので、実際に驚いた時と同じ体と心の動きをするので疲れます。苦しい演技や必死な場面なんかはぐったりです。
ロミュオーは堀内さんに似ているとのことですがそれでもこの19世紀に苦悩しながらも生きる青年になるにはスイッチがあるのかなと想像しますがそれは何ですか?
またいつものほんわか堀内さんに戻る瞬間はいつですか?
ーロミュオーとの共通点をまず探していきました。ロミュオーの重圧は周囲からだけでなく自分自身でかけている点や、どんなに自分が求めていても諦めなくてはいけないことや、大切なものを失った後の空虚な感じや。多くの方が人生で通るそうした経験を、引き出しから引っ張り出すのがスイッチのような役割になってます。時代は違えど、日々感じることは現代の人とさほど変わらないかな、と思っています。
幕が降りた瞬間にはケロっとしてます😂
今回1日に2回公演でしたがマチソワ間はどのように過ごしましたか?
ー1回目が終わったあとがすごく疲れてしまって。とりあえずアミノ酸を飲んで、ご飯を食べて、ストレッチやマッサージ。その後メイクとヘアを直しました。もう1度バーレッスンでウォームアップをしてから、本番前は昼公演の修正や反省を確認していました。
相手が違うことでやはり気持ちは少し変わるものですか?
クラリモンド、セラピオン皆さんそれぞれに持ち味がありましたが
ークラリモンドは身長が違うので組む上で工夫が必要でした。ピルエットのサポートをするとちょうどクラリモンドの髪の毛が僕の目に入るので、自分の高さ調整をしたり。ずっと日高さんと練習していたので、成田さんの時はリフトのおろし方を変えたりしました。日高さんは上品なクラリモンド夫人的な雰囲気だったので、僕もおどおどしたような、高校生みたいなイメージで娼館のシーンは作りました。成田さんはもう少し親やすいクラリモンド姐さんな感じだったので、少しだけ前のめりに作ってみました。娼館のシーンは、他のダンサーたちが踊っている間の自由なやりとりが多いのでその辺りに違いがありますが、他のシーンは細かく振り付けが入っているので、あまり差はなかったです。
一緒に舞台に立ってみての感想です↓
日高さん:貫禄のクラリモンド夫人。二人で、どのタイミングで恋に落ちるか、ロミュオーはいつ神父に戻ることにするのか、など、役への解釈を話し合って作ってきました。クラリモンド夫人が弄んでいるのが娼館のシーン、ベッドルームでは強めの「なんでなんで、どこ行くん?」な感じ、二幕では自分を犠牲にするロミュオーに気づいたときの表情が印象的でした。
成田さん:クラリモンド姐さん。「あんたうちのこと好きやろ」的な娼館のシーン、「行かんといて、嫌や嫌や」なベッドルーム。2幕は本番が一番良かったです。二人とも入り込みすぎて、途中何回か声出してました😂成田さんの顔を掴むところでは「アイヤー」って言ってて、韓国語?!ってなりました😂
石橋さん:石橋くんらしい気持ちを押し殺す中での演技で、2幕のクラリモンドと対峙した後だけ感情的にベールを床に投げ捨て、「こんなにお前のこと思ってるんだぞ!」っていう石橋さんでした。
杉野さん:異様に優しい杉野セラピオン。1幕の登場シーンから、優しい視線。クラリモンドとの対峙後も「ロミュオー、目を覚ましてくれ」な感じでした。
今回のメイクのポイントなどありましたら教えてください
ーメイクはできるだけ薄いメイクにしたかったんですけど、ファンデーションをしっかり塗らなくちゃいけないので、自然なメイクにするとバランスが悪くなってしまって。初日は柔らかめなメイク、二日目は気がついたら普段通りのしっかりメイクになってしまいました。眉毛はいつもより短く、眉山を低くして柔らかい印象にしました。全体的に茶系で作りました。反省点はもっと薄いメイクにしたいのと、眉毛をベージュマスカラで消しているのですが、スティックのりで潰した方が綺麗なので、配信の時はそうしようかと思います。